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子どもエッセイ

おとなの発達障害③

2016/09/04

1週間の休暇をもらったAさんは、この機会に学生時代の友だちに会うために、連絡を取ってみることにしました。

今はLINEなどのメッセージアプリがあるため、わざわざ電話をしなくても、簡単に連絡が取れます。

連絡が取れた友だちと、どういうことをして遊ぼうか、と自分なりにプランを練り、とりあえず飲みにいくことにしました。

久しぶりに会えると思うとわくわくします。

まずは最近まで身近だった大学時代の友だちです。

lineで連絡を取ります。しかし、既読がなかなかつきません。

翌日になってようやく既読がついたかと思うと、「仕事が立て込んでいる。平日に休み?いいよな~」との返答。飲みに誘うものの、「悪いけど、仕事が忙しくてそれどころじゃない。週末は彼女とも会わないとだし」と断られてしまいます。

Aさんは、それほど友だちが多くありません。

中学校・高校・大学と、せいぜい数名程度です。

中学校時代の友だちは、連絡を取ろうとしましたが、ラインのアドレスを知りません。携帯番号はわかるので、かけてみると、現在使われていないとのアナウンス。

仕方がないので、高校時代の友だちに連絡を取ってみました。

こちらもなかなか既読はつきません。

それはそうですよね。

平日の昼間はたいてい皆仕事です。

ようやく翌日の夜になって既読がつきましたが、返答はありません。

他の友だちはみんな会えないので、最後の綱は高校時代のこの友だちだけです。

Aさんは、なんとか自分の練ったプランを実行したいと思い、返答がないまま連投します。

「飲みにいこう。いつなら行ける?こっちは今日でも明日でも空いている」

ところが、これにも既読がなかなかつきません。

そしてまた翌日になって、ようやく既読がついたものの、返答はありません。プランの実行に拘っているAさんは、また返答なしで連投します。

「いつ空いてる?明日までなら行けるから」

とうとう、既読はつくものの、友だちからの返答はありませんでした。

結局、友だちとは誰とも会えないまま、次の受診日になりました。

診察室で、お医者さんに聞かれます。

「ゆっくりリフレッシュできましたか?友だちとは楽しめましたか?」

Aさんは、下を向いて、誰とも会えなかったことを伝えました。

お医者さんは、残念でしたね、とAさんに共感し、今日は、ちょっと遡って、小さいころからのAさんのことを教えてくださいね、と言いました。

Aさんは、覚えている限り、小さいころからの話をしました。

小さいころは手がかからないと親から言われてきたこと。

小学校・中学校ともに、学級委員などを率先してやっていたこと。

先生たちからの指示はきちんと守っていたこと。

ルールを守らない他児には諭してあげていたこと。

成績はそこそこ良好で、勉強は答えがあるからそれなりに簡単だったこと。

なぜか友だちから文句を言われることが多かったこと。

大学時代はそれほど多くの友だちができなかったこと。

小さいころから、ルールを守らない人がいると我慢できずに注意していたこと。

せっかく教えてあげているのに、逆切れされることが多かったこと。

自分は間違っていないのに、聞いてくれないと思うことが多かったこと。

でも、きっと、周りが頭が悪かっただけで、理解できなかったんだろうと今は思っていること。

今回もお医者さんは、Aさんの話をにこやかに聞いてくれています。

間でいくつかお医者さんから質問がありました。

Aさんはそれにもちゃんと答えました。

そして、今回の診療が終わり、翌日からまた出勤です。

お医者さんからは、心配なこととかあればいつでも来てくださいね、といわれています。

Aさんは、わかりました、と言いながらも、困ることがあるとも思っていませんでした。

だって自分は間違ったことはしていないのだから。

さて。

翌日、1週間ぶりの出勤です。

Aさんは、久しぶりにスーツに着替え、自宅を出ました。

いつも使っている通勤電車に乗り、会社の最寄り駅で下車します。

いつものように改札を抜けようとすると、足が動きません。

改札の前数メートルまで行けるのですが、そこから先に進めないのです。

慌てたAさんは、リーダーに電話を入れます。

足が動かなくて改札を通れません。

リーダーは、1週間何の音さたもなかったAさんからの久々の電話に、不審な声を出しながらも、部長に相談するから折り返しの電話を待つように、とAさんに伝えました。

ほどなく、Aさんに部長から電話があり、今日はそのまま帰宅するように、と指示が出ました。

Aさんは、指示通り、帰宅することにしました。

翌日も同じように、スーツに着替え、会社の最寄り駅で下車するものの、改札が通れません。

その翌日も同じです。

その翌日は、スーツに袖を通そうとすると、途端に吐き気に見舞われました。

結局、部長からの指示で、しばらく休暇を取ることになり、また病院受診することになりました。

真面目なAさんは、出勤できないことへの後ろめたさや自己嫌悪でいっぱいです。

毎日、朝起きたら出勤し、仕事をして帰宅する、という当たり前の日常が送れないことへのいらだちも感じます。

部長からの指示を受け、病院へ予約の電話を入れ、翌日、受診することなりました。

そこで、Aさんは、お医者さんから「鬱病」との診断を受けます。

そして、併せて、「自閉症スペクトラム」の診断も受けたのです。

 

※またまた続きます。

 

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