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子どもエッセイ

おとなの発達障害④

2016/09/08

さてさて。

Aさんという架空の人物の架空のエピソードを3回に渡って書いてきましたが、いかがでしたか?

すべて架空の話ではありますが、エピソードの部分部分は実際に世の中で事例としてあったケースを話を変えて使っています。

Aさんが診断された「鬱病」は、ドクターによっては、「適応障害」などとされることもあります。

そこはおいておいて、今回のポイントとも言うべきところは、Aさんが併せて診断された「自閉症スペクトラム」にあります。

話の中にいくつもの特徴的なAさんの傾向があります。

・マニュアル通りでないと気が済まない

・自分のことは棚に上げて、人へはしっかり注意する

・柔軟性に乏しい、臨機応変な行動が難しい

・年齢が上か下かなど、分かりやすい指標が判断基準になり、その判断基準がすべてとなる

・相手の都合は考えず、自分の思い描いたルールや予定にこだわる 

などです。

小さいころからのAさんの話の中にもいくつか特性が見られます。

・おとなのいうことをよく聞く子だった(マニュアルや指示は得意)

・リーダーシップがあった(他者からの評価は事実とは違っても、自分ではそうだと思いこんでいる)

・他者に逆切れされることが多かった(他者の気持ちに共感したり、理解したりに乏しいため、ルールを押し付けるから文句を言われてしまう)

・マニュアルや指示があると、そのことはできるが、それらがないと対応ができない

・勉強はでき、大学進学までしているので、知的には課題がない

などです。

注意しないといけないところがもう1点あって、例えば、人を見下すようなAさんの態度や考えが、このエピソードの中にいくつかありますが、これらは、そもそもの特性というより、Aさんがそれまで生きていた中で、思い通りにならないことが多かったため、自分の自尊心を守ろうと身に付けた防衛反応のひとつである、という点です。

Aさんにとっては、悪気はもちろんなく、相手を傷つけようという意図もありません。

基本的に真面目であり、融通がきかないだけなんですが、他者理解に欠けるために、他者とうまくいきづらいわけです。

小さいころは、周りにいる友だちは、気が弱ければAさんには逆らいませんし、優しい子だと受け入れてくれます。

ただ、年齢が上がると共に、それぞれが自分の人生でいっぱいいっぱいになり、余裕がなくなってきますし、それぞれがおとなになっていくわけですから、いつまでも子どものままの関係性ではなくなっていくわけです。

Aさんがせっかく1週間の休暇の間に友だちに会おうと思っても、そういった理由から、友だちの方は相手をしてくれないのです。

lineを既読スルーした友だちは、きっと、返答に困っている内に立て続けにAさんから連絡があったことで、相変わらず自分のことばかりだな、と呆れてしまったのかもしれません。

学生時代までと社会に出てからとでは、その間に結構大きな見えない壁があります。

特に今回の例のAさんのような特性を持つ自閉症スペクトラムの場合、学生時代は特に問題なく、気づかれないまま放置されてしまったケースで、社会に出て、途端に他者と共同で何かをやっていく仕事に就いて初めて、Aさんが抱える課題に気づいた、となることが往々にしてあります。

しかも、鬱だとか適応障害だとかを発症してしまってますから、完治するのには時間がかかります。

そこで、今回の一連の話の冒頭部分の、早期発見に話が戻るわけです。

もちろん現実世界では、時間を巻き戻すことはできませんから、仮の話になりますが、仮にAさんが、乳幼児期にその特性を誰かに知ってもらっていたら、どうなったでしょう?

きっと、「そういう特性を持つ人なんだ」ということで、理解してくれる人が一人か二人はいたはずです。

それに、本人も、自分にはそういうところがあるから、気づいたら注意してね、とも言えたはずです。

マニュアル通りにしか動けないAさんに、世の中はマニュアル通りにはいかないことを、もっと早くから伝えてあげることも可能だったはず。

事前に情報があれば、Aさんなりの対応は可能ですからね。

もちろん、おとなになって初めて挫折を味わったからといって、人生が終了するわけではないのですが、それでも中には、就職に失敗したからと自殺してしまう人だっているわけですし、たったひとつの会社で不適応を起こしてしまったことで、そのまま引きこもってしまう人だっています。

今回のAさんの場合は、小中学校などでいじめには合っていませんから、ラッキーな部類ですが、いじめにあってしまって早々に不登校、というケースもなかにはあるわけです。

不登校や引きこもりがイコール人生の終わりとは思いませんが、避けることができるのならば、避けたほうがいいですよね。

自殺はできることなら、ではなく、絶対に避けたいことです。

そのために、できるだけそういったことを避けるために、早期発見が重要になってくるわけですが、この早期発見は、「診断名をつける」ことではありません。

結構みなさん、関係機関の人たちも勘違いしがちなんですがね。

早期発見は、「特性を知って、特性に応じた配慮のため」に行うものです。

ですから、無理強いするものでもないですし、必ずしも診断名が必要になるものでもありません。

たいてい、親というものは、自分の子どもがどんな性格をしているか、って結構正確に理解しているものですよね。

ただし、親にも発達の課題がある場合は、なかなか正確な子どもの発達理解は難しさがあります。

その辺が、最近の研究などから少しずつ分かってきていますが、それはまた別の機会に書きたいと思います。

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